RFリモコンの電波干渉対策
5-4 空間上の電波干渉対策
空間上の対策とは、物理的に距離を離すことにより対策を行うことを意味する。この対策は、ユーザーに期待することになり、メーカー側の積極的な対策とはいえない。しかしながら、これまでに述べた無線干渉対策で万全ということが無く、空間上の対策をとらなければならない場合がある。
以下に、一例として家庭環境下における、電子レンジの距離と、パケットエラーレート(PER)を測定した結果をまとめた。
5-4-1 測定条件
① リモコンと受信側の距離を5mとする。(家庭環境下における一般的なリモコン操作距離を想定)〔図14〕
【図14 測定の配置及び構成】
② インバータ式電子レンジの高周波出力は500Wとし、負荷として水2ℓ暖める。
③ 通信は弊社RFモジュール(FC8602T)を用いて、測定のため受信チャネル(2405MHz,2450MHz,2480MHz)をそれぞれ固定して各周波数においてPERを測定した。 (「7.測定に使用したRFモジュール」参照)。
④ 1回の送信パケット数は1000パケットとし、3回送信の平均によりパケットエラーレート(PER)の算出を行う。 1パッケトは18byte構成とし、一般的なリモコンデータとしては最長のデータ長を想定した。
⑤ 測定環境は、他の無線の影響がない、家庭環境に近い室内で行った。各配置については〔図14〕の通りである。(実環境下での影響を観測するため、フェージングの影響を含む室内での測定とした。)
5-4-2 測定結果
各周波数Chにおける、電子レンジからの距離とパケットエラーレート(PER)を〔表3〕に示す。
PER1%以上を得るには、2405MHzでは5m、2480MHzでは1m以上離して電子レンジを配置すればよいことが分かる。
5-4-3 考察
〔表3〕の結果より、RFリモコンの商品性として求められる1%パケットエラーレートが望める距離は、電子レンジが出力する周波数帯域に依存する(測定に使用した電子レンジのスペクトラムは〔図10〕参照)。
電子レンジが使用する中心周波数の通信チャネル2450MHz(Ch20)において、所望のパケットエラーレートを得るには、〔式9〕の妨害余裕度から推定すると40m以上離して電子レンジを設置しなければならず、家庭環境においては実質的に不可能な対策となる。
ただし、通信チャネル2405MHz(Ch11)では5m、通信チャネル2480MHz(Ch26)では1m程度、電子レンジを離して設置すれば所望のパケットエラーレートを得ることができる。 さらに、電子レンジを使用する時間は限られており、また使用中においてリモコンが全く使用できない訳ではない。従って、少なくとも先に述べた周波数上の対策及び、時間軸上の対策を組合せ、パケットエラーレートの向上を図っておくことが必要である。
空間上の対策とは、物理的に距離を離すことにより対策を行うことを意味する。この対策は、ユーザーに期待することになり、メーカー側の積極的な対策とはいえない。しかしながら、これまでに述べた無線干渉対策で万全ということが無く、空間上の対策をとらなければならない場合がある。
以下に、一例として家庭環境下における、電子レンジの距離と、パケットエラーレート(PER)を測定した結果をまとめた。
5-4-1 測定条件
① リモコンと受信側の距離を5mとする。(家庭環境下における一般的なリモコン操作距離を想定)〔図14〕
【図14 測定の配置及び構成】
③ 通信は弊社RFモジュール(FC8602T)を用いて、測定のため受信チャネル(2405MHz,2450MHz,2480MHz)をそれぞれ固定して各周波数においてPERを測定した。 (「7.測定に使用したRFモジュール」参照)。
④ 1回の送信パケット数は1000パケットとし、3回送信の平均によりパケットエラーレート(PER)の算出を行う。 1パッケトは18byte構成とし、一般的なリモコンデータとしては最長のデータ長を想定した。
⑤ 測定環境は、他の無線の影響がない、家庭環境に近い室内で行った。各配置については〔図14〕の通りである。(実環境下での影響を観測するため、フェージングの影響を含む室内での測定とした。)
5-4-2 測定結果
各周波数Chにおける、電子レンジからの距離とパケットエラーレート(PER)を〔表3〕に示す。
PER1%以上を得るには、2405MHzでは5m、2480MHzでは1m以上離して電子レンジを配置すればよいことが分かる。
5-4-3 考察
〔表3〕の結果より、RFリモコンの商品性として求められる1%パケットエラーレートが望める距離は、電子レンジが出力する周波数帯域に依存する(測定に使用した電子レンジのスペクトラムは〔図10〕参照)。
電子レンジが使用する中心周波数の通信チャネル2450MHz(Ch20)において、所望のパケットエラーレートを得るには、〔式9〕の妨害余裕度から推定すると40m以上離して電子レンジを設置しなければならず、家庭環境においては実質的に不可能な対策となる。
ただし、通信チャネル2405MHz(Ch11)では5m、通信チャネル2480MHz(Ch26)では1m程度、電子レンジを離して設置すれば所望のパケットエラーレートを得ることができる。 さらに、電子レンジを使用する時間は限られており、また使用中においてリモコンが全く使用できない訳ではない。従って、少なくとも先に述べた周波数上の対策及び、時間軸上の対策を組合せ、パケットエラーレートの向上を図っておくことが必要である。
距離y | 2405MHz | 2450MHz | 2480MHz |
---|---|---|---|
0m | 17% | 76% | 2% |
1m | 10% | 58% | 0% |
2m | 5% | 50% | 0% |
3m | 3% | 45% | 0% |
4m | 3% | 41% | 0% |
5m | 0% | 35% | 0% |
6 まとめ
RFリモコンと同じ家庭で使用される、無線LAN,Bluetooth,電子レンジとの電波干渉対策についてまとめと〔表4〕の通りである。これまでの調査においては、〔表4〕の対策により、1%パケットエラーレートを得ることは可能であった。 ただし、留意すべき点としては、今後、新たに登場する無線機器や、さまざまな加熱方式の電子レンジの登場が考えられ、そのような無線機器又はISM機器と物理的な距離を確保するなど、ユーザー側へ協力を求める記載が必要である点は、これまでの無線機器と同様である。無線器またはISM機器 | 有効な干渉対策 |
---|---|
無線LAN | チャネルサーチなどによる空きチャネル送信 |
Bluetooth機器 | 再送手順 |
電子レンジ | 短い送信パケットの採用と、CCAによる送信タイミング調整及び、電子レンジの中心周波数から離れた通信チャネル(Ch11, Ch26など)の選択 |
7.測定に使用したRFモジュール
今回の測定に使用した弊社のRFモジュールの仕様について簡単に紹介する。外観は〔写真1〕の通りでありプリントアンテナにより送受信を行うモジュールである。物理層はIEEE802.15.4と同じパケット構造を採用している。尚、送信手順についてはリモコンに最適な無線干渉対策を送信プロトコルに実装したモジュールとなっている。一般特性、無線部仕様は〔表5〕〔表6〕の通りである。
【写真1 RFモジュール(FC8602T)】
項目 | 仕様 |
---|---|
電源電圧 | 2.1~3.6V |
動作温度範囲 | -10~+50℃ |
消費電流 | 42mA受信時(typ.) / 5uAスタンバイ時(typ.) at 25℃ 2.7V |
上位インタフェース | URAT 19200bps |
PWM(IRデコードデータ) | |
外部接続 | 2.5mmピッチ 7ピン |
外形寸法 | 20×30×5mm |
項目 | 仕様 | 単位 | 備考 |
---|---|---|---|
周波数範囲 | 2400~2483.5 | MHz | |
1次変調方式 | O-QPSK | Offset- Quadrature Phase Shift Keying | |
2次変調方式 | DSSS | Direct Sequence Spread Spectrum | |
アンテナ | プリントアンテナ | ||
通信距離 | 20(参考値) | m | 妨害電波がないオープンエアー |
参考文献
1)谷口慶治:「アンテナと電波伝搬」、共立出版(株)2)Robert C. Dixon:「スペクトラム拡散通信方式」、(株)日本技術経済センター
3)鈴木博:「ディジタル変復調技術」、(株)横須賀テレコムリサーチパーク
4)日本エリクソン(株)、宮津和弘:「Bluetooth技術解説ガイド」、(株)リックテレコム
5)鄭立:「ZigBee開発ハンドブック」、(株)リックテレコム
筆者:SMK FC事業部設計部 ・大塚 健二
出典:月刊EMC 2008年8月5日 №.244 記事のPDFファイルはこちら→